渋谷NIGHT MAPができるまで

2017年6月23日(金)。

この日は、伊藤園茶ッカソン実行委員会にとって、特別な日であった。

『渋谷NIGHT MAP』がリリースされ、そのお披露目の記者会見が開催されたのである。『渋谷NIGHT MAP』は、伊藤園茶ッカソンにとって、初めてできた子供、といっても良いかもしれない。それは、いくつもの縁がつながれて生まれた、約1年越しのプロジェクトだった。

実践女子大学人間社会学部の松下慶太准教授から、「ウチの大学でも茶ッカソンをできませんか?」と、連絡があったのは、2016年2月のこと。ぜひやりましょう、と二つ返事で引き受け、すぐに打ち合わせの場を設けた。このとき、松下教授と日頃から交流があるという東急電鉄の方にも同席していただき、実践女子大で茶ッカソンを開催するならどんなテーマが良いかについて皆で話し合った。すると、自然と渋谷にまつわる話で盛り上がった。伊藤園も、実践女子大も、東急電鉄も、“渋谷に拠点がある”、という共通点があったのだ。

「渋谷にはインバウンドの人が多いけれど、ほとんどがスクランブル交差点とハチ公前で写真を撮るだけで、他の場所へ移動してしまうらしい」ふと、こんな話になった。スクランブル交差点付近で目にするインバウンドの人の数は年々増えているように感じるが、あんなに人がいるのに、渋谷の街で買い物をしたり遊んだりしていないのだろうか? これについて調べてみると、統計調査でも、インバウンドの人が渋谷に滞在する時間はほかの観光場所に比べて短く、それに比例して渋谷での消費活動も少ないということが分かった。これは、茶ッカソンで扱う課題として、面白いかもしれない。

こうして、2016年6月に実践女子大学渋谷キャンパスで開催した茶ッカソンのテーマは、「SHIBUYAのコンシェルジュになろう!」に決まった。これは、“インバウンド観光向けSHIBUYA1 short tripツアー”のアイデアを考える、というもの。茶ッカソン当日、実践女子大学のキャンパスの一角には畳が敷き詰められ、恒例となった座禅の時間から始まり、参加者は「お〜い、お茶」を飲みながら、2日間にわたって様々なアイデアを出しあった。

1日目は、チームごとにShibuyaツアーのコンセプトとストーリー作り。2日目は実際に街へ出て、ハチ公前でインバウンドの方に声をかけ、それぞれが考えたツアーを体験してもらう。チームごとのツアーの様子は、随時twitterで実況中継され、それを元に、最終プレゼンが行われた。魅力的な発表が相次ぎ、プレゼンは大いに盛り上がった。そしてこのとき、審査員として参加してくださった渋谷観光協会の金山さんから、のちに『渋谷NIGHT MAP』誕生のきっかけとなる運命の一言が放たれる。

 

「面白いから、これ、形にした方がいいんじゃないですか?」

 

この言葉がきっかけとなり、2017年1月、私たちは改めて『茶ッカソンin SHIBUYA』を開催した。テーマは、“インバウンド向けSHIBUYAマップを作ろう”。金山さんの言葉から、インバウンド向けの渋谷観光をテーマに、何か具体化するアイデアを考え、「マップを作る」という企画を思いついたのだった。

『茶ッカソンin SHIBUYA』も、畳の上でお茶を飲みつつ和やかな雰囲気の中、数々の個性豊かなSHIBUYAマップのアイデアが生まれた。見事優勝したのは、「渋谷あけぼのまっぷ」と題した、“渋谷の夜の楽しさを案内する”マップ。これは、「オールナイトで遊べること」を渋谷の新たな観光資源として考えた、画期的なアイデアだった。そして、なんとこのアイデアが、渋谷区観光協会の新たな観光マップ制作の正式なプロジェクトして採用されることになる。これが、“SHIBUYA NIGHT MAP”の原型が誕生した瞬間だった。

それから渋谷区観光協会の皆様の多大なる協力のおかげで、とんとん拍子に話は進み、実際にMAPを制作するというプロジェクトが立ち上がった。渋谷にある大学、國學院大學星野ゼミのメンバーもプロジェクトに加わり、毎週のようにアイデア出しのために集まった。こうして、ようやく『渋谷 NIGHT MAP』の完成に至った、というわけである。

茶ッカソンでは最初から『渋谷 NIGHT MAP』を作るために動き始めたわけではない。茶ッカソンの場がきっかけとなり、人とアイデアが自然とつながって、いつのまにか、『渋谷 NIGHT MAP』という一つのモノができあがっていった。それは、不思議で、感慨深い体験だった。

『渋谷 NIGHT MAP』お披露目の記者会見では、渋谷観光大使アンバサダーのZeebra氏らが、渋谷の魅力について語っていた。「渋谷は、幅広い世代が混じることができる、いつも新しく何かが起こりそうな街」。渋谷について笑顔で語るアンバサダーたちの話に耳を傾けながら、多種多様な人が混じり、何かが生まれる予感がする場所、というのは多くの人を惹き付けるのだ、と、改めて思った。茶ッカソンをきっかけに、様々な人やアイデアが元になって作られた『渋谷NIGHT MAP』が、魅力ある渋谷の街を新しくしていく一助となると想像すると、胸が高鳴った。